フォーセンスの「デザイン住宅開発マニュアル」および「業務プロセス改革マニュアル」を導入する以前は、どのような課題がありましたか。
当時は住宅部門として、ローコスト系FCの加盟店事業と、高スペック・高デザイン・自由設計の自社ブランド事業を、並行して展開していました。売上の中心はFC加盟店事業で、平成6年(1994年)頃までは年間150棟前後の受注がありました。 課題は、大きく分けて4つありました。1つ目は、ローコスト系FC加盟店事業の受注が、急激に落ち込んでいたこと。2つ目は、FCが商品構成を中価格帯にシフトしたため、低価格帯の商品が手薄になっていたこと。3つ目は、ベテラン営業スタッフがローコスト系パワービルダーから多数引き抜かれ、営業力が低下していたこと。4つ目は、自社ブランド事業における商品化・標準化・マニュアル化が、思うように進まなかったことです。
1つ目の課題「ローコスト系FC加盟店事業の受注が急激に落ち込んでいた」についてご説明ください。
ローコスト系FCの加盟店事業は当社住宅部門の売上の中心でしたが、平成15年(2003年)頃からは受注が急激に減少し始め、平成20年(2008年)には最盛期の3分の1まで落ち込みました。原因として大きかったのが、FCのブランド力の低下でした。同じ商品のチラシでも、FCのブランドを前面に出すと反応率が下がり、FCのブランドを隠すと反応率が上がる、という現象が起きていました。これに対して、当社のオリジナルブランドでの集客はむしろ好調でしたので、FCに加盟しているメリットは、ほぼなくなっていました。FCを退会し、新たに住宅部門の売上の柱になる事業を確立する必要がありました。
2つ目の課題「FCが商品構成を中価格帯にシフトしたため、低価格帯の商品が手薄になっていた」についてご説明ください。
FC加盟店事業は、当社住宅部門で低価格帯住宅をカバーする事業だったのですが、FCが商品構成を中価格帯にシフトしたため、当社オリジナルブランドの事業と、ターゲットが重複し始めていました。手薄になった低価格帯の商品は、別のFCに加入し直すか、または自社で開発して補う必要がありました。
3つ目の課題「ベテラン営業スタッフがローコスト系パワービルダーから多数引き抜かれ、営業力が低下していた」についてご説明ください。
ベテラン営業スタッフが他社に引き抜かれて営業力が低下したのは、住宅の商品化・標準化と営業手順の仕組み化が、十分実現されていなかったからです。新人の営業スタッフでも戦力となるような、商品力とプロセスで売る仕組みの構築が当時の課題でした。
4つ目の課題「自社ブランド事業における商品化・標準化・マニュアル化が、思うように進まなかった」についてご説明ください
FC退会後に自社商品を開発するためにも、新人営業スタッフでも戦力になる仕組みを構築するためにも、以前から自社ブランドで展開していた中~高価格帯住宅事業の収益性を改善するためにも、商品化・標準化・マニュアル化は必須でした。ところが、住宅の商品化や設計・施工・営業などの標準化・マニュアル化を社内で進めようとしても、作業はなかなかはかどりませんでした。
なぜ、商品化・標準化・マニュアル化が進まなかったのですか。
そもそも私達のようなゼネコンには、「商品化」という発想自体がありません。大型建築物の設計・施工はすべて一回限りのものですから、社内にデザインや設計を標準化する文化がありませんでした。FCの商品を約20年にわたって販売・施工していましたが、商品を開発し標準化・マニュアル化するノウハウは、残念ながら蓄積されていませんでした。
ご説明いただいた4つの課題を、どのように解決しようとしましたか。
1つの選択肢として、ブランド力があり低価格帯商品が充実した別のFCに、加盟し直すことも検討しました。ただ、結局この案は却下となりました。1つの理由は、やはりFCの加盟料が高額だったこと。もう1つの理由は、自社のオリジナルブランドでの集客が好調でしたので、FCのブランドや集客力を利用するメリットがあまりなかったことです。そこで、適切なパートナーの力を借りながら、商品化・標準化・マニュアル化を自社で進めることになりました。
商品化・標準化・マニュアル化を進めるための「適切なパートナー」の要件を教えてください。
適切なパートナーの要件としては、主に次の3つがありました。
パートナーの要件1:短期間で商品を開発できるノウハウを持っていること 主力事業の落ち込みを挽回するための商品開発ですから、1年も2年も掛けるわけにはいきません。できるだけ短期間で商品を開発できるノウハウが必要でした。 パートナーの要件2:低価格住宅から高価格住宅まで、幅広く応用できるノウハウを持っていること ローコスト系FCの商品に代わる低価格住宅から、従来より自社ブランドで展開していた高スペック・高デザインの高価格住宅まで、幅広く応用できるノウハウが必要でした。また、自社ブランドでは従来からデザイン重視を打ち出していましたので、低価格住宅でも、デザイン性の高い商品を開発できるノウハウが必要でした。
パートナーの要件3:実績があること、商品化・標準化・マニュアル化による工務店の業績向上に、十分な実績があるかどうかも重視しました。
要件を満たすパートナーをどのように選定しましたか。
さまざまなコンサルタント会社や会員制組織を比較・検討しました。フォーセンスと、あるコンサルタント会社の2社が、最後まで検討対象として残りました。 フォーセンスについては、無料セミナーに幹部社員を派遣しました。コンサルタント会社については、社長と幹部社員が説明を聞きに訪問しました。
最終的にフォーセンスを選定した理由を教えてください。
決め手になったのは、フォーセンスではノウハウがマニュアル化されているのに対して、コンサルタント会社の方は、コンサルタントが当社の状況を調べた上で、商品開発の方向性を指導する方式だったことです。マニュアルが整備されているフォーセンス方式の方が、より短期間で商品開発が可能と判断しました。また、フォーセンスの役員会社が、実際に商品力と仕組みで販売実績を出していることも、選定理由の1つでした。
フォーセンスの各種マニュアルの導入で苦労した点があれば教えてください。
デザインにしても、矩計にしても、商品開発の方法自体にしても、フォーセンスのやり方はかなり斬新ですので、従来のやり方に慣れた設計部門からは、当初疑問や反発の声も上がりました。フォーセンスの西山社長が経営する宮崎のチトセホームの見学会に、当社の導入責任者と設計部門スタッフを派遣したところ、実際にフォーセンスのやり方で建てた家を見た者は、商品のすばらしさや、やらなければならないことを理解して帰ってきました。社内でもしばらくは、現物を見た者と見ていない者との間に温度差がありましたので、その温度差を埋めるのに苦労しました。 ゼネコン的な一件ごとの積上方式に馴染んだ文化を変え、商品化・標準化・マニュアル化の文化を社内に定着させるのにも、時間が掛かりました。幸い当社では、導入責任者のリーダーシップの下で社内文化の変革に成功しましたので、商品化・標準化・マニュアル化の文化が定着してからは、商品開発も営業プロセス構築もスムーズに進むようになりました。
(写真右:フォーセンス経営支援室チーフプランナー 五十嵐賢一)滋賀県長浜市で総合建設業を営む材信工務店では、平成20年(2008年)、住宅部門強化のため、フォーセンスの「デザイン住宅開発マニュアル」および「業務プロセス改革マニュアル」を導入しました。代表取締役社長の伊藤正基氏(写真中央)に、フォーセンスのマニュアル導入の経緯と効果をうかがいました。