[鼎談]
(写真左)フォーセンス 代表取締役 飯嶌 政治氏
(写真中)旭化成建材 断熱住宅資材事業企画部部長 亀井 喜朗氏
(写真右)新建新聞社 代表取締役 三浦 祐成
フォーセンスが断熱材メーカーの旭化成建材と手を組み、高性能断熱材「ネオマフォーム」を家1棟にまるごと使ったZEH商品「ネオマボックス」を開発した。工務店はこの商品を活用して集客・営業につなげることができる。この画期的な取り組みについて、フォーセンス代表・飯嶌政治氏、旭化成建材 断熱住宅資材事業企画部部長・亀井喜朗氏、新建新聞社代表・三浦祐成が語り合った。
売価2000万円・利益想定400万円のZEH住宅商品
旭化成建材とコラボ、ネオマフォームの強み最大化
三浦:宅ネットワークと断熱材メーカーが手を組んでつくった工務店向けの住宅商品パッケージ。ユニークなコラボだと思いました。
飯嶌:今回フォーセンスは裏方に徹しているんですが、資材メーカーが部材・工法提供にとどまらず、工務店さんの集客増・受注増のために住宅商品をオープンで供給するという新たな取り組みにチャレンジしました。
断熱材メーカーが商品化住宅にチャレンジするわけ
三浦:どんないきさつで「ネオマボックス」の開発を?
飯嶌:いろんな資材メーカーさんからプレゼンいただくのですが、メーカーさんは自社製品がいかにすぐれているかを語りがちで、工務店側が知りたいその資材がビジネス・儲けにどう結びつくのかという情報はなかなか出てこない。このミスマッチを解消しない限り、せっかくいい資材があっても勉強熱心な一部の工務店さんだけにウケるマイナー建材で終わってしまう。
それはあまりにももったいないと思い、5年前に旭化成建材さんと知り合った際に「工務店さんにネオマフォームを広めたいなら、ネオマを1棟分使った住宅を商品化し、売価はいくら、利益はいくらになるかまで落とし込んで提案したほうがいい」という話をしました。それが出発点ですね。
亀井:飯嶌社長の指摘はどれもそのとおりで、ネオマフォームは断熱性能にこだわる技術系工務店さんには支持をいただいていますが、一般の工務店さんにももっと使っていただきたい。そのためには私たちの発想から営業手法まで変える必要があり、その試みの1つとして飯嶌社長のアイデアをかたちにしました。
三浦:マイナーとメジャーの分岐点を「キャズム」と言い、これを超えて初めて商品は普及期に入ります。ネオマフォームがこれまでキャズムを超えられなかったとすれば、今回の住宅商品「ネオマボックス」がいいきっかけになると期待しています。また、総合資材メーカーならまだしも、断熱材メーカーが単独で住宅商品を開発するのは難易度が高く、工務店支援のプロであるフォーセンスさんと組むことは良い選択だったと思います。
コンセプトは「普通の工務店が提案できるシンプルなZEH商品」
三浦:商品開発のポイントは?
飯嶌:主なダーゲットはこれから高性能住宅に取り組む工務店さんで、「一般的な住まい手に向けて気軽に提案できるZEH商品」がコンセプト。ボリュームゾーンを狙う商品です。一般的な住まい手は性能・デザイン・機能のバランスを求めているので、過剰さを抑えてシンプルを心がけ、総2階3LDKの基本プランと、断熱層の厚みや窓の大きさを規定したモデルプランをつくりました。
三浦:そういうコンセプトなら性能レベルもZEH基準で十分ですね。
亀井:55年前から断熱材事業に取り組んできた当社としては高断熱化によって得られる健康・快適というベネフィットを最大化するため「HEAT20」のG2を推奨したいところですが、今回はボリュームゾーンへの訴求がねらいなので、認知が進んでいるZEHレベル及びG1を落としどころとしました(6地域)。工務店さんからすると、簡単にZEHに対応いただけるのがメリット。ネオマフォームは性能が高いため、2020年基準の2割アップの性能値を付加断熱なくネオマだけでクリアできます。
売価を2000万円に設定し400万円の想定利益確保を図る
三浦:マニュアルを拝見しましたが、売価や利益率の設定方法までわかりやすく示してあって、すぐに事業化できそうです。
飯嶌:「儲かる」というキーワードを言える商品にしたかったので、当社のノウハウも惜しみなく盛り込みました。ネオマボックスは売価2000万円、利益率23〜25%、1棟あたり400万円の想定利益が見込めるように設定しています。
亀井:フォーセンスさんの商品化の手順は、最初に理想的な売価と利益率を設定してから基本プランや仕様を塩梅よく決めていく逆算型。ネオマフォームは他の断熱材に比べると高額だと言われますが、今回は売価2000万円のなかに収まっています。ネオマが幅広い価格帯で問題なく使えるという見本で、うれしい発見でした。
断熱欠損を解消職人不足に備える工夫も
三浦:施工性にも配慮が行き届いていますね。
亀井:職人不足もあって施工の合理化は大きなテーマ。そんななかで、コンセントボックスや配管の切り欠きが不要になるよう壁内の断熱材をできるだけ薄くしたい、というニーズが高まっています。105㎜のグラスウールを壁いっぱいに充填するのと比べ、60㎜のネオマフォームだと45㎜の余裕が生まれ、施工が楽になり、断熱欠損の心配もなくなります。しかも充填パネル工法のため、パネル分だけ単価は上がりますが、大工手間を減らすことができます。前述のように付加断熱も不要です。職人不足が深刻化する今後を見据えた工夫を盛り込んでいます。
プレミアム断熱材のブランド力と大手のブランド力を味方につける
飯嶌:ネオマボックスを採用いただく最大のメリットは、旭化成という企業グループのブランド力を活かせること。工務店さん自身のブランドに重ねることで強い武器になるはずです。
三浦:ネオマフォームは高性能だけど高額というお話がありましたが、逆に言えばそれは「プレミアム断熱材」ということ。部材レベルでもブランドとなり、差別化になる可能性を秘めています。旭化成グループという企業のブランド力と、ネオマフォームという資材のブランド力をうまく活用してほしいと思います。
亀井:性能と価格だけで判断されることが多い断熱材が、工務店さんのブランディングをお手伝いできる。これは私たちにとって新たな発見でした。今回のコラボがなければその価値に気づけなかったかもしれません。
使い方は工務店の自由トークのきっかけにしても
三浦:これまで性能訴求をしていなかった工務店さんがネオマボックスで性能訴求する。また、自社のメイン商品をネオマボックスに切り替える。高級層をターゲットにしてきた工務店さんが価格帯を広げるためにネオマボックスを投入する―いろんな使い方ができそうです。
飯嶌 私は商品化=きっかけだととらえています。まずは営業トークの糸口として使っていただければ。すでに販売実績もあり、フォーセンスの会員工務店さんに建ててもらった第1棟目はすぐに購入者が現れて、見学会もままならないほどでした。
亀井:私たちは新しいマーケティングツールを手に入れたという未知の期待にワクワクしています。数社の工務店さんに提案してみたところ、「若手営業にまかせて、新しい営業スタイルを確立したい」「住宅 FCを辞めて強みがなくなってしまったので、自社商品として活用したい」「商品として使う予定はないけれど、内容を勉強したい」といった声をいただいています。様々な工務店さんに様々な用途で使っていただけるとうれしいですね。
三浦:商品化、ZEH、ブランディング―と工務店の悩み解決に資材メーカーがコラボレーションという手法で一歩踏み込んで貢献する。画期的な挑戦だと思いますし、今後も意欲的なコラボを期待したいと思いました。
商品化住宅パッケージ「NEOMA-Box」(ネオマボックス)
問い合わせ・申込みは、全国の旭化成建材営業部・支店まで。
詳細は専用サイトで確認できる。http://neoma-box.com/
「ネオマフォーム」が標準仕様のZEH住宅商品。商品化の考え方に始まり、各種図面一式、一次エネルギー消費量計算結果、営業プレゼン資料、基本仕様、販売価格シミュレーションなど、必要なツール類をすべてパッケージ化した。集客・受注・利益額の向上、ターゲットの拡大に。
•基本プラン
建物本体価格1670万円、予定利益率23%に設定した場合
→1棟あたりの想定利益額は約400万円
•断熱仕様例
(すべてネオマフォーム[0.020W/(m・K)])
桁間100㎜厚、壁60㎜厚、床80㎜厚(UA値0.53W/(㎡・K))